悲運の銃~H&K XM8~

G36をベースにしたアメリカ軍の次期制式ライフル候補。
特徴としてはG36同様プラスチックを大量に使用し軽量、基本型で2.8kgと3kgありません。
曲線を多用した人間工学的デザインにより無理なくフィット。
そしてストーナー63の様に部品交換でアサルトライフル、カービン、分隊支援火器に変身するマルチ設計です。

圧巻だったテスト結果。
2007年に米軍でH&K M416、SCAR-Lそして現用機であるM4A1との性能比較テストがなされました。
各銃6000発を発射したその結果は、
・M4A1…排莢不良882回
・H&K M416…排莢不良233回
・SCAR-L… 排莢不良226回
・H&K XM8…排莢不良127回
圧倒的な性能差を見せつけています。

でも採用されなかった。
米軍はハンドガンの時もテスト→白紙やっています。
M9(ベレッタM92F)も一度決まりかけてちゃぶ台返し、再テストで採用されましたね。
正直よくあることなのかとも思います。
但し今回はコルト社がロビー活動を展開しXM8の採用に強硬に反対したというのがありました。
性能で及ばないから政治力を駆使、ちょっとやることがセコい気もします。

アメリカを代表する銃器メーカーであるコルト社ですが、実は自社開発したヒット作がそう多くない。
M1911…ジョン・ブローニングに設計を依頼。
M16…大量生産出来ない&親会社が傾いたアーマライト社から権利を買った。
外部委託or外から購入に慣れきっていたのかそれ以降ヒット作があまり出なかった。
80年台後半からの仕上げの低下や駄作の連発などの迷走ぶりは有名。
挙句タバコ会社みたく訴えられたら敵わんと製造を殆んどやめるような話まで出ましたね。

でも軍部からも猛反発。
特に海兵隊とか特殊部隊(確かSEALS)からも反対されたみたいです。
いわば現場の声ですからこっちは無視できませんね。
性能高いのに何で使わないの。
そこには長年M16シリーズを使ってきた「慣れと安心」があったんだと思うんです。

軍人は道具に対して保守的だと思います。
最新の銃を用意しました。
テストの結果は最高です。
さあ、使って下さい。
そう言われて使う軍人は一人も居ないでしょう。
職人というのは使い慣れている=クセを知り尽くした道具を好むもの。
増して軍人は命がかかっています。
実際に高性能だったとしても、よく知らない道具なんて使わない。
「命の保険」である銃に慎重にならざるを得ないのは当然です。

対抗馬を見れば分かる。
同じH&K M416はそれこそM16の発展型であるM4A1の改良型です。
またSCAR-Lも基本はFNCの発展型であるものの、グリップ周りはM16に近くなっています。
何より製造元のFN社は5.56mm弾薬の元祖、FNCとM16はマガジン共用出来ましたね。
しかしXM8は外観がまずM16と違い過ぎた。
そして内部構造もG36ペース。
ドイツ軍の制式採用小銃ですが、米軍にG36のノウハウはありません。
最も性能が高いが、最も異質な銃。
それがXM8だったと思います。

革新的な銃が受け入れられるには。
そもそもM16自体が出た当時は光線銃だの子供のおもちゃだのとXM8みたいな扱いでした。
こちらが爆発的に広まったのは何と言ってもベトナム戦争が大きいと思います。
戦争中で、しかも苦戦。
最初に米軍が持ち込んだM14ではAK-47に対抗できなかった。
他に選択肢が無い以上、M16を使わざるを得ない状況です。
そして実戦投入されてみるとM16は様々なトラブルが続出しました。

でも戦争中なので使い続けた。
何度も改良がなされ今では一級品の小銃になっています。
切羽詰まった状況じゃない限り、革新的過ぎる銃は受け入れられないんだと思います。
平時じゃガンダム<ボールの改良型になっちゃう可能性大という事です。

 

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