【映画】アメリカン・スナイパー(American Sniper)の感想

クリント・イーストウッドは化け物か。
御年86歳。
年齢のせいか俳優業は引退したみたいですが、監督としての創作意欲は全く衰えませんね。

クリス・カイルについて。
見る前に知っていたのは、
アメリカ軍人で狙撃手(タイトルがそうだから分かるというレベルですね)。
ちょっと前に亡くなった。
この二点だけです。

切っ掛けはWAのホームページ。
見ようと思ったのは話題もさることながら、WAのホームページを見るたびに、
アメリカン・スナイパー・モデル
をやたらプッシュしている様に見えたからです。
エアガンも去ることながら、元ネタになった映画に興味が湧いたと。

米軍史上最高ヒットスコア160のスナイパー。
クリス・カイルによる自伝小説が元だそうです。
世界最高のスナイパーといえばフィンランドのシモ・ヘイヘ
こちら確認戦果542という凄まじいスコアです。
「ちゃんと確認出来た」戦果でこの数字なので、実際はもっと多い可能性があります。
更に言うと冬戦争の100日程度で成し遂げたもので、加えてサブマシンガンで倒した数(約200)は含まれていません。

アメリカ軍で有名なスナイパーといえば「山猫は眠らない」トーマス・ベケットのモデルにもなったカルロス・ハスコック
この人が当時一番だと思ってたんですが実はスコア93で4位。
クリス・カイルのスコアは世界一ではないにしろ「米軍で一番、現代戦で160」と言うのは半端ないですね。
個人的に狙撃というのは一種の超能力だと思っています。
いくら機械が発達したとはいえ、気温や湿度など様々な要因を加味して長距離射撃を成し遂げる。
もうこれは天才の領分だろうと。

ネイビーシールズ所属。
主人公のクリス・カイル、経歴が中々変わっていますね。
元々ロデオ乗りとしてアメリカを巡業していたんですが、米大使館爆破事件に衝撃を受けます。
義憤にかられて軍隊へ志願。
いきなりネイビーシールズの選抜試験を薦められる。
軍歴も無いのにいきなり志願出来るの?

WikipediaでNavy SEALsを調べると入隊資格はアメリカ海軍か沿岸警備隊に属していること、と書かれていますね。
あと年齢が18歳から27歳とも。
映画じゃクリス30歳でジジイ呼ばわりされていたんですが。
更にWikipediaでクリス・カイルを調べると1999年にシールズに合格とある。
実際のクリスは1974年生まれですから25歳…何か色々合いませんので、考えるのは止めにします。

凄いよクリント・イーストウッド!
実話を元にした話だけにハリウッド的な「お約束」が排除されています。
最初に狙撃したのが何と手榴弾持った母と子供。
女子供は殺さないのがハリウッドのお約束。
かと思ったら容赦なく撃ち殺した。

また残虐な敵の幹部「ブッチャー」という人物が出てくる。
アメリカ人に協力的なイラクの長老に対し見せしめ。
子供をドリルで惨殺しようとする。
すんでの所でクリスが狙撃して子供は助かるのがお約束。
と思ったらクリス敵の攻撃で手出しできず処刑を許してしまう。
この映画にはハリウッドの常識が通用しません。

パートタイムソルジャー。
クリスの狙撃の腕は素晴らしく、赫々たる戦果を挙げいつしか「伝説(レジェンド)」と呼ばれるようになる。
この間クリスは何度もイラクとアメリカを行き来することになります。
そして段々と精神に変調が現れてくる。
殆んど他国から侵略を受けたことのないアメリカにとって戦争とは「外国へ行って行うもの」 という意味合いが強い。
つまり戦地と故国にあまりにもギャップがある訳です。

仮にイラク人の場合、イラクが平和になったとしても瓦礫の中からの復興を行っていく。
良い悪いは別にして、戦場とのギャップが少ないと。
あと音にはすごく敏感になるのは分かります。
大きな音が出ると敵襲かとビクッとする、或いは子供の喧嘩や犬に噛まれそうになっただけで過剰反応する。
そんな症状が出てきて妻を心配させると。

戦闘中に電話ってアリなの。
不思議に思ったのがカイルが戦地のどこからでも妻に電話をかけること。
任務中に家族電話とか大丈夫なのか。
軍から見たら機密駄々漏れじゃないかと。
また妻も夫と話していたら急に銃声が鳴り響いて通信が途絶える。
夫の身に何が?もしかして死…と気が気じゃない訳です。
基地に帰ってからなら分かりますが、狙撃警戒中にラブコールとか本当にアリなのか。

真の敵ムスタファ。
一応物語なので明確な目標、敵が居ます。
最初は上記のブッチャーかと思ったんですが、彼は逃げようとした車ごと爆発。
ろくでもない奴にしてはあっさり退場。
ひょっとして生きているのでは?と思いましたがそのまま死んだ様ですね。

そして真の敵はやはりスナイパー。
元シリアのオリンピック代表で500メートル向こうから狙撃してくるムスタファ。
と思ったら後に有効射程1000メートルという事が判明。
使っているのはドラグノフ狙撃銃に見えますが、ルーマニア製PSL狙撃銃の様です。
単なるドラグノフのコピーじゃなくて、AK47から独自発展させたもの。
ドラグノフの有効射程600mに対しPSLは有効射程1000mを誇ります。
弾も同じでどっちもセミオート方式なのにこの差は何なんでしょうね。

相手が1000mなら。
クリスは更に上をいきます。
ムスタファ発見、しかし距離は1920m…ほぼ2km。
流石に無理だろと思ったら見事成功。
50口径でもないのによく当たったな。
しかし結果的に周囲の気を引き、四方八方から敵が攻めてくる。
特殊部隊の応援を待てば安全に避難できた。
しかし撃たねば誰かが撃たれていた。
バカヤローと言いながらも、クリスを責める人は居ませんね。
最大の敵ムスタファを倒したクリスはここで除隊を決意します。

第2の戦い。
除隊して家族と幸せに暮らしましたとさ、とはなりません。
何度も戦場へ行ったことでクリスには深刻なPTSDの症状。
泣きわめいて恐怖したりはしません。
しかしあるはずのない機関銃やヘリの音が響いてくる。
そして後悔。
自分は軍隊を辞めて良かったのか、戦場に行けば仲間をもっと助けられるのに。
妻タヤが指摘した「戦場に心を置いたまま」という表現がピッタリですね。

クリスが始めたのは心や体に傷を追った同じ軍人のリハビリの手伝い。
同じ苦労をした仲間と話したり、射撃を楽しんだり。
擬似的な戦場を実感することでクリス自身の心の均衡を取り戻そうとしたのかもしれませんね。

ここまでやるの。
おそらく自伝ではこの辺りで終わっていると思います。
なぜならこの後はクリス自身は書きたくても書けないから。
例によってPTSDに苦しむ元軍人のケアに出かけたクリス。
しかしこれがタヤが見たクリスの最後の姿。
クリスは心を病んだ元兵士に射殺されてしまう。
てっきり映画が公開された後の話かと思ってました。
公開の一年前に亡くなっていたんですね。

家族の存在は後から効いてくる。
最初の頃は戦闘シーンばかり目が行って、タヤとのラブストーリーは邪魔に思っていました。
ハリウッド映画だから愛とか家族とか入れないと気が済まないのかと。
しかし病んでいくクリスにとってその家族が拠り所となっていくのが印象的でした。

公式サイトウィキペディアimfab(登場した銃器の紹介)


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