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不遇の銃 ステアーGB|コラム・雑記

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参考資料:月刊Gun1981年9月号&2010年3月号

君はステアーGBを知っているか?

オーストリアのステアー・ダイムラー社はプラスチックを多用したステアーAUGアサルトライフルを開発したメーカーです。このAUGはオーストリア軍のみならず、世界中の軍隊で採用され、ブルパップ小銃最大のヒット作となりました。

小銃のヒットで勢いを付けたステアー社が次に狙ったのがオーストリア軍正式採用拳銃の座です。小銃とセットで軍御用達となればステアー社の名声は一気に高まります。そんなステアー社が虎の子として送り出したのがダブルアクション&ダブルカアラムで装弾数18発を誇るガスロッキング方式の拳銃「ステアーGB」です。

GBとはドイツ語で「Gas Bremse」、英語で「Gas Break(ガス・ブレーキ)」の略で、ステアーGBの作動方式を端的に示す名称です。

L.E.S P-18名義で知ってました

しかし私がステアーGBという名前を知ったのは後の事です。但しその形は知っていました。 月刊Gunの1981年9月号に掲載された「L.E.S P-18(米国での呼称:LES Rogak P-18 pistol)」という拳銃と同じ形だったからです。

史上稀に見る低評価
この聞いたことも無い銃が私の心に残ったのは、その物凄い低評価っぷりが強烈に印象に残っているからです。
「まるで内職のオバサンがヤスリでゴシゴシ作ったようなすき間だらけの銃」
数ある拳銃の中で、こんな評価を聞いたのは先にも後にもこの銃だけです。

ガン雑誌に限らずメーカーをスポンサーに持つ情報誌は、製品に多少問題があってもボカシたりヨイショしてしまう「提燈記事」を書くことはあっても否定的な記事を書くことは稀です。しかしこの「L.E.S P-18」に関しては、ライターが遠慮なく本音を暴露しているのが丸分かりだったのです。

  • 見た目が汚い
  • 部品と部品の隙間が酷い
  • レバー類が固い
  • 内部メカの作動が渋い
  • 実射すれば作動不良連発

こんな言語のオンパレード。挙句、
「あまりの酷さにあるガン雑誌のライターは、頭に来てL.E.S P-18を叩き付けた」
そんな注釈まで載っていたんです。これは後日「GUNS&AMMO」のライターだという事が分かりました。

実際月刊Gunでもライター自ら分解してバリを削るなど再調整までして実射にこぎつけたのですが、あまりの作動不良に断念した程です。

拳銃界の「修羅の門」
その昔著名なTVゲーム雑誌「ファミ通」で10点満点中2点を付けられた伝説の糞ゲームがありました。 漫画原作の格闘アクションゲーム「修羅の門」です。 通常、どんなに面白くない&出来が酷いゲームでもファミ通で3点未満が付けられる事はありません。 しかしその不文律をブチ破り、ライターに「超やばい!本当に完成品か!?」とまで言われたゲームです。
「L.E.S P-18」は拳銃の「修羅の門」だったのです。

名義貸しの悲劇

ステアー社が次期正式採用拳銃の座を狙い、満を持して送り出した筈のステアーGB。その兄弟である「L.E.S P-18」は何故これほどまでに低評価だったのか。 それには名義貸しによる悲劇があったのです。

ステアー社製品のアメリカ販売はLes Rogak(レス・ロガック?)という人が担当していました。その為「ステアー」ではなく「L.E.S」という拳銃になったのです。外国のマイナーメーカーの製品を、自国ブランドで販売するというやり方は銃器の世界では珍しくありません。 性能第一のアメリカにもネームバリューでの売れる売れないは存在するからです。

SIG P220やベレッタM84はその昔「ブローニングBDM(ブローニング・ダブル・モード)」という名称で販売されていましたし、イスラエルのIMIが製作したデザート・イーグルはアメリカのマグナム・リサーチ社名義で販売されています。近年の成功例としてはクロアチアのポリマー拳銃HS2000です。この性能に着目したスプリングフィールド社がデザインを見直して「スプリングフィールドXDピストル」として大ヒットしているのは皆さんもご存知でしょう。

L.E.S社の設立
ステアーの販売代行をしていたLes Rogak氏の元にステアーGBの設計図が届いた事から歯車が狂い始めます。 何を思ったのかRogak氏は自らL.E.S社を設立し、この設計図を元に自前でステアーGBを作って売り出したのです。 これが正式なライセンス生産なのか、勝手に作って利益を独り占めしようと目論んだのかは分かっていません。 ところがL.E.S社に技術が無かった為、設計図通りステアーGBを作れなかったんです。

作動方式の要であるガスロックシステムには精密な加工が必要だったのですが、これをL.E.S社の技術で再現できずにガス漏れを起こす始末。 仕方が無いのでリコイルスプリングとバッファーを使い、シンプルなブローバックシステム(つまりストレートブローバック)に妥協したものを製品として売ったのです。 「設計図通りに出来ていない、低レベルな技術で再現されたL.E.S P-18」は見た目こそ似ていても、ステアーGBとは別物だったのです。

驚いたステアー社はL.E.S社に製造中止を求め訴訟を起こし、L.E.S P-18は2,300挺あまりが生産された所で販売中止と相成りました。

ダークホースの悲劇

いま一つの悲劇はほぼ本命視されていたオーストリア軍制式採用拳銃からステアーGBが落選した事です。 言うまでもありませんが、ステアーGBを蹴落としたダークホースこそ、グロック17(採用名:Pi-80)です。

それまでグロック社はエンジニアリング・プラスチックでこそ有名なメーカーであり、軍にもシャベルやナイフを納入していました。 しかし銃器を製作した事は一度も無かった為、制式採用拳銃トライアルに提出したグロック17が同社初の拳銃になります。 グロック社が国内一の大メーカーであるステアー社に、それも初作品で勝利した事は「ガン業界のシンデレラ・ストーリー」とまで言われました。

オーストリア軍では小銃でプラスチックを多用したステアーAUGを採用した事で、従来のプラスチックの悪いイメージ(鉄より弱い)が払拭されていました。 その為プラスチックを多用した拳銃であるグロックの採用に躊躇が無かった様なのです。 これが「銃は鉄で出来ているもの」という保守的な軍隊であれば、見た目でハネられていたでしょう。

皮肉にもステアーAUGの採用がステアーGB敗北のお膳立てをしてしまい、グロック社の踏み台になってしまったのです。 無論大メーカーであるステアー社ですから多少の劣勢は埋めてしまう政治力ぐらい持っているでしょう。 グロック17がステアーGBを大幅に凌ぐ高性能だったからこそ成し遂げられた快挙といえます。

予想外の事態に驚いたステアー社は次の販売先としてアメリカの制式採用拳銃を狙います。ところがアメリカのトライアルはオーストリアのそれ以上に競争が激しいうえ、テストで「命中精度と操作性は良いが、信頼性で旧来のM1911に及ばない」と早々に落選してしまいます。

民間販売へ転換、そして製造中止

オーストリア軍および米軍の制式採用を逃し、大口見込み客の獲得に失敗したステアー社は「軍隊での大口採用は見込めない」として、ステアーGB販売のターゲットを民間に方針転換します。

民間での販売はかなり好評だった様なのですが、大口の採用が無いステアーGBは「作ってもあまり儲からない銃」となってしまいました。製造コストが高く利幅が薄かった為、値上げも検討されたのですがアメリカの代理店から「150ドルも値上げ(550ドル→700ドル)したらステアーGBは売れなくなるだろう」と言われ断念したと伝えられます。

もともと軍の制式採用を狙って製作された「社運を賭けた銃」だけに、そんじょそこらの拳銃よりも開発コストが高かったのは容易に想像できます。

こうしてステアーGBは運も無かった事も手伝って、何ら成果を挙げる事無く製造が中止されたのです。 その後ステアーではグロックのノウハウを取り入れたと思しきステアーM9を開発したのですが、既に築かれたグロックの牙城を崩すには至っていません。

ステアーM9についても日本では発表と同時にKSCがトイガン化をアナウンスしたのですが、未だに製品化されていません。 同社のグロックと食い合いをする可能性や、知名度の低さがネックになっているものと思われます。

ステアーGBその後

軍での大口採用は無かったものの、レバノンやパキスタンの法執行機関がステアーGBを購入したという話があります。また製造中止を発表した途端、アメリカではこれに抗議する手紙が数千通も届いたとのことで、決して不人気なだけの銃ではなかったことが伺えます。米軍の制式採用拳銃の座を争って敗北したSIG P226がその後も売上げを伸ばしているのを見るに、マーケティング不足もまたステアーGBにとって悲劇だったのかもしれません。

実射レポートとして「9ミリ拳銃の中でもかなり反動が小さい」そうです。バレルが固定されている銃でリコイルが少ないとなれば命中精度がかなり良くなる気がします。

日本では 東京マルイが固定ガスガン を作っているので、それなりに知っている人が居ると思います。
「持っているけどこれどんな銃なんだっけ?」
そんな人の助けになれば幸いです。

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